2010年6月23日水曜日

[jp]日本からエンジェル投資家がいなくなる? 日本証券業協会のパブコメ問題

Bylineから

日本証券業協会が出したパブリックコメントの募集Twitter上などで物議を醸している。というのも、未公開企業が自社の株を個人投資家に対して募集していた場合には、証券会社はその企業のIPO時の株の売り出しの引き受けをしてはならないというものだからだ。これは、エンジェルのような個人投資家から出資を受けているスタートアップは実質的には上場できないと言っているようなものだ。

ただ、これには適用除外もあって、個人投資家といってもその企業の関係者(役員とか親族とか)に株の募集をしている場合や、有価証券届出書や有価証券報告書を提出している場合は除外されるとしている(もちろん協会が認めないとダメだが)。

なぜ、ここに来て未公開企業が個人投資家から出資を募ってはダメというお達しが出てきているかと言えば、未公開企業の株の売買の詐欺が横行しているからだ。金融庁のサイトにも「未公開株購入の勧誘にご注意!~一般投資家への注意喚起~」と詐欺まがいの未公開企業の株の購入に関するトラブルについて解説している。

たしかに「来年上場するいい会社の株があるから買わないか?」と誘われれば、それにお金を出してしまう人もいるだろう。ただ、それは個人のリスクであるし、それによって被害があるからということで、すべての個人投資家からの出資を認めないというのは、エンジェルのような人間を排除して、スタートアップ企業の創出を止めてしまいかねない。

もちろんこれに関しては、企業側が有価証券届出書を提出すればよいということになるのだろうが、現在、すでに個人投資家から出資を受けたスタートアップについては過去にさかのぼってその経緯を含めて報告するのは難しいだろう。そもそも、このルールが適用されればたとえ問題がないとしても、個人投資家から出資を受けている企業の上場について証券会社は敬遠せざるを得なくなるだろう。

株式新興市場における上場の審査が強化されている現在、日本の新興市場をさけて海外の証券市場でIPOを目指す企業も出てきている。事実、日本のクリック証券は韓国の新興上場市場KOSDAQに上場の申請をし、この6月10日に認められている。ウワサによれば、ほかにも日本の新興市場を避けてKOSDAQ市場を目指している国内のスタートアップも数多いという。今回のエンジェル投資規制ともとられかねないこの制度が実施されれば、さらにスタートアップ企業の国外上場に拍車がかかるかもしれない。

このままでは、日本でスタートアップ企業に投資をしようなんていう投資家がいなくなってしまうかもしれないし、起業家も日本国外へ出ていかなくてはならない。そうなってしまう前に、付焼き刃的な対処ではなくて、金融市場を含めてもっと包括的に産業のことを考えた国の施策が必要なのではないだろうか。





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